安倍政権は外国人労働者(=移民)
の受け入れ拡大にハッキリ舵を切ろうとしている。移民受け入れ分野の第1が「介護」。今のところ平成31年からの5年間で、5万ないし6万人の受け入れを見込んでいるようだ。だが、実際にはもっと多くなると見ておく必要があるだろう。何しろ人材不足数の見込みは30万人とされているからだ。しかし介護にとって、取り分け大切な意味を持つのは“コミュニケーション”。私の老母もデイケアサービスのお世話になっている。だから、その事は実感としてよく分かる。コミュニケーションが成り立つ為には、言う迄もなく「言葉」と「感性」が重要な基盤となる。移民にそれを過大に期待する訳にはいかないのは勿論だ。にも拘らず、介護を大幅に移民に頼る政策には違和感が強い。介護分野が極端な人手不足に悩んでいるのは周知の事実。しかし、一方で介護福祉士の登録をしながら、実際には介護職に携わっていない人が、50万人以上もいる。平成25年時点で登録者数が1,189,979人なのに対し、実際の従事者数は僅か660,546人。従事率は55.9%しかない。多くの人が介護福祉士の登録をしながら介護職に従事していないのが実情だ。その理由は一概に言えないだろう。しかし、介護職が精神的・身体的な負担の大きさに比べて収入が低いなど、就労条件に問題を抱えている事実は軽視できない。同年調べで、常勤者の平均賃金が、全産業の32万4千円に対し、福祉施設介護員の場合は21万8千9百円。そこを改善して、介護福祉士に登録している人達が、積極的に介護職に従事して貰えるように取り組むのが、先決ではないか。来年からの5年間で不足すると見込まれている人数分をはるかに越える介護福祉士が、既に国内に存在するのだから。安倍政権がそれをしないで、大急ぎで移民に頼ろうとしているのは、順序が逆だ。そんなやり方は、何より移民を“安く使える”労働力としか見ていない証拠。介護分野への移民の受け入れを拡大して行けば、介護従事者の賃金はより低くなる恐れが強い。介護現場の就労条件の劣悪化は当然、介護される側にも跳ね返って来る。
誰もが当事者になり得る問題だ。